錦繍(きんしゅう) |
この本は職場の先輩から勧められました。私は一時アガサ・クリスティーの名探偵
ポアロシリーズやシャーロック・ホームズを読み漁っていたときがありましたが、
最近はあまり小説は読んでいませんでした。 この小説は他の小説と1つ大きく異なるところがあります。それは小説の内容がすべて 手紙のやり取り形式で書かれているのです。 状況設定や登場人物の説明などもその手紙の中で行われます。手紙の内容以外は 一切出てきません。私はその表現方法に新鮮味を感じ、興味がわきました。 10年程前に離婚した30代の男女がある日、蔵王のゴンドラの中でばったり会う ところから始まります。登場人物の男性は不倫中の女に殺されかけ重症を負い、 そのため不倫が妻の知るところとなり離婚します。それまで順調に歩んでいた男の 人生は一転、仕事もうまくいかず転落の人生となってしまいます。一方女性は離婚後 愛のない結婚生活を送り、障害を持った一人息子の母親となっていました。 偶然再会した時はお互いあまり言葉を交わさず挨拶程度だったのですが、その後女性 があの手この手で男性の住所を突き止め、手紙のやり取りが始まるのです。 その手紙のやり取りの中で過去の出来事等に触れられています。 手紙のやり取りを読んでいると、一度離婚し10年たったからこそ、お互いに対して 思いやりや理解が深まっているのだと感じました。女性は愛はありませんが結婚して いる身ですし、男性も同棲している20代の女性がいますがまだ結婚はしていないので、 復縁もあるかと最後までドキドキさせられます。 また、この男性と同棲している20代の女性の話も最後のほうに出てくるのですが、よく できている女性というか、健気というか、私はこの女性が一番好感が持てました。 物語に引き込まれあっという間に読み終わってしまった1冊です。 |